言いたいことがあった。

ときどき、無性に何か発言したくなる時があるのです。

佐藤vs羽生、名人戦第1局

(田山幸憲風に)

僕が使っている教材は、AbemaTVの将棋チャンネルと、iPadアプリの将棋DB2

 

佐藤天彦名人と羽生竜王名人戦第一局が終わった。

なんというか、すごい一戦だった。ボクシングで言うなら第一ラウンドからノーガードの殴り合いといったところか。あるいは、肉を切らせて骨を切ろうと思ったらリング上が血だらけになってしまっていた、とう感じだろうか、大駒の切り合い、金銀の切り合いで盤上があっという間に混乱状態。シロウト同士の下手将棋も往々にして盤面がぐちゃぐちゃになるけれど、それが名人戦の序盤で起きたのだから、見ている方としてはどうなるんだろうとドキドキハラハラだ。とはいえさすがに達人同士の戦い。考え抜かれたその一手一手は、一見ぐちゃぐちゃに見えかねない盤上を、しっかりと至高の戦いにまで高めていた。達人の戦いとはすごいものなのだと改めて認めさせられる。

もっとも、たとえそうではあっても、この第一局の内容は僕のようなシロウトにとっては棋力アップのための参考資料にはとてもなりそうになかった。シロウトがあれを真似したら、やっぱりただのぐちゃぐちゃ将棋になってしまうのだ。シロウトの下手将棋と達人の乱戦は紙一重のようであって、その“一重”の距離は途方もなく遠い。

いやぁ、本当にすごい将棋だった。

 

すごいというと、たった97手の将棋に2日もかけてしまう本人たちもすごいのだけど、それを飽きさせずに視聴させる解説者の話術もすごいものだと感心してしまった。なんたって1時間かけてやっと一手という時だってあるのだ。おまけに途中には食事タイムまである。

さらに言えば、そんな画面的に地味な内容を、ダイジェストではなく実況生中継してしまおうというAbemaTVの度胸にも恐れ入ってしまう。これもまたすごいことだ。

 

それにしても、つくづく将棋好きにとっては本当に良い世の中になったものだと思う。

正直なところ、僕は中学高校と将棋部にいたことはいたけれど、それほど強い方ではなかった。うまくなれなかった原因のひとつは面倒くさがりなところだ。今から40年前は、棋譜を見るにも新聞の将棋欄を見るにも、どうしても将棋盤を目の前に広げて、実際に駒を置く必要があったのだ。そうなってくると、それはもう息抜きではなくて勉強の域に入ってしまい、本当に熱心でなければとてもそこまでやる気にはなれないのだ。

それに比べて今はどうだろう。iPadアプリの将棋DB2など、タッチひとつで棋譜が勝手に動いてくれて、しかも詳しい人たちのコメントも参照できて、息抜きがてら楽に見られるのだ。この手軽さは、棋力の底上げやファン層拡大には大いに役立つはずだ。

 

ああ、あの頃ネットが発達していたら、ヒフミンや羽生七冠の瞬間なども見られていたかもしれないのに……。

 

とまあ、藤井ブーム以来すっかり将棋熱に再び火がついてしまった。そういえば田山さんも将棋好きだったんだよなぁ……。